きょうのねこ日和 ねことの意思疎通は人間と同じだと気づく

猫を飼っている人なら誰でも経験があるであろうと思うが、猫という生き物はほんとうに気まぐれだ。
我が家の茶トラ柄のメス猫も、私がほんの少し目を離してパソコン画面に目を向けていたら、その間に先ほどまで寝ていた私のベッドの上から降り、背中の後ろを通って気づいたら真横にちょこんと座っていて驚く。
「っ! ? びっくりしたぁ」
そんな声も彼女には聞こえないらしく、視線の先にはぴっちりと閉じたクローゼット。
「あぁ、またか」と思う。
この猫はこのクローゼットが自分の力で簡単に開くことを知っている。
ちょいちょいと手でひっかければ、木製の扉はするするっと横にスライドしてしまう。
自分の身体が入りそうなちょうどいい長さだけ開けるのがまた上手いと感心する。
余計な労力を猫という生き物は使わないのだ。
さて、彼女の動作を見守ろう。

まずは左手でちょいちょいと扉のふちを叩きながら、なかなか開かないと気づくと今度は身体を横にして戸をガリガリし始める。
そうして、自分の片手が入るくらいの小さな隙間ができると、そこに手、続いて自分の顔を入れ込み、通路を確保するのだ。

さぁ、行くぞ。

彼女の目はそう告げる。
上下二段に分かれたクローゼットの下の段には、衣類の入ったクリアケースがある。上の段には私のお気に入りのバッグが数個とコート類。

上の段に飛び乗ろうと、腰を左右に小刻みに揺らし跳躍の準備をする。

そこで、私がストップに入った。

当然私にはここまでの彼女の計画などすべてお見通しである。
猫は余程のことがない限り生活や行動のスタイルを変えることはないからだ。

「ダーメ」
そう言って抱きかかえる。
「また入ろうとして。ダメじゃない」
分かるわけはないということは知っているが、そう言い聞かせる。
目を見つめると、すぐさま目を空へと逸らされた。
そして腕を降ろし、彼女を床へすとんと置く。
置くとすぐにまた先程と同じことをしようとする。
この繰り返しだ。

「だから、ダメでしょー」
そうまた言い聞かせるために床から抱き上げる。

そしてまた床に離した。

そこでふと気づく。

私は彼女の気持ちをまったくどけて話をしていないかと。
つまり、自分の言い分と都合だけを押し付けて、それを分かってもらおうとしてはいないか。

人間が相手でもそんなことは不可能に近いことは経験で十分過ぎるくらいに知っている。
それが相手は猫。言葉の通じない動物だ。

うまくいくわけがない。

私はやり方を変えてみた。

「そっかー。ここに乗りたかったんだねー」

柔らかい声でゆっくりと、あくまで猫の目線と気持ちになって、そう言葉を発した。
そして頭の後ろを数回撫でた。
「ごめんねー、おばちゃんの大事なものがここに入ってるのよー」

すると。

すたすたすた。

彼女は理解したのか、元のベッドの上へゆっくりと戻っていった。
そして丸くなり、目を閉じて眠りに入った。

なるほど。
そうか。

人間と同じだったんだ。
いくら猫といっても感情はある。
表情はなくとも、意思はあるのだ。

「ダメ」とあからさまに否定して子どもが理解できないように、まずは相手の身になって物事を見ないと、うまくいかないのだ。
共感しなきゃ。

ただ一方的な押しつけでは、反発されて終わりだ。

彼女が言葉を理解したわけではもちろんないだろうけど、猫は人間の声のトーンやテンポから心理を読み取るというから、私の心の余裕がもしかしたら伝わったのかもしれない。

小さな瞬間にとても大きなことを気づかされたよ。

ありがとう。脱毛 同意書